永遠の色を重ねて




 やってきたのは、病院の裏手の小川です。そこに生えている花を摘んできてほしいと、光崎さんはおっしゃっていました。


「まあ、すごい…!」


 そこには辺り一面、黄色い絨毯のように菜の花が咲き誇っていました。


『昔よく息子と遊んだ場所でね。今の時期とても綺麗に咲いているはずだよ。』


 目を閉じて懐かしむように語った光崎さんの気持ちがよく分かります。


 私は摘み取った花束を抱えながら、しばしその情景を思い浮かべていました。















 その日の夜。私は彼に電話を掛けました。


『どうした?』


「うん。聞きたいことがあって…」


 数秒の沈黙を置き、思い切って言いました。


「私、英語話せないんだけれど。大丈夫?」


 顔は見えないのに、驚いて目を丸くしていることは容易に想像出来ました。


「えっ、それって…」


「うん。私も…あなたとずっと一緒に居たい。」


 照れくさいような、切ないような、それでいて温かい。不思議な気持ちです。



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