永遠の色を重ねて


 何かを得る為には失うものもあります。けれど、一度得たものは生涯心に残る。だから私はこの選択をしました。


 世間から見れば結婚に逃げたと思われるかもしれません。


──それでも、後悔のないように生きたいから。















 先輩方にそれを打ち明けると、意外にも皆さん賛成して下さいました。


「おめでとう!寿退社じゃない!」


「羨まし~い!」


 予想外の反応だったので、私は戸惑いました。


「え、あの。皆さん怒らないんですか…?」


 たった一年で仕事を辞めようとしているのに、何故誰も咎めないのでしょう。


 そう思っていると、婦長さんが前に進み出ておっしゃいました。


「そうね。社会的に見たら、そう思うでしょうね。」


 威厳のある眼差しに、自然と背筋を伸ばして向き合います。しかし次の瞬間、それは優しいものへと変わっていました。


「…でもそれが貴女の幸せなら、きっと正解よ。」


 ああ。私は幸せです。こんなに優しい人達に囲まれて、笑っていられるなんて。


「はい…っ。最後まで一生懸命働きますので、どうぞよろしくお願い致します。」



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