永遠の色を重ねて


「きれい…」


 身近な物だけでこんなに素晴らしい絵を描けるということを、私は初めて知りました。


「さすがですね。これはどちら宛てに?」


「明日退院するという女の子に渡してもらえるかな。」


「分かりました、渡しておきますね。」


 婦長さんも光崎さんも慣れた様子。どうやら誰かへの贈り物のようです。


「とまあ…毎日こんな感じで。」


「よろしく頼むよ。」


「はあ…」


 よくは分かりませんが、私達は一礼をして病室を後にしました。


 その後、一般業務に戻りながら、先輩方に詳しく教えて頂きました。


 光崎さんはもう五年もあの個室に入院しているそうです。


 暇つぶしの為に他の病室で取り替えられた花を貰っては押し花にし絵を描き始めたところ、あまりの素晴らしさに人気が集まり、みんなから依頼を受けるまでになったのだとか。



< 5 / 50 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop