永遠の色を重ねて
猫とおばあちゃん
春の暖かさも大分馴染んできた頃。私はいつものように担当患者さんの元へ行きました。
「土岐さん、今日は体調いかがですか?」
「おかげさまで、今日はずいぶん楽だわ。」
「そうですか。」
土岐ハツ江(トキ ハツエ)さんは腰を痛めて度々入退院をしているお婆さまです。
土岐さんは一日に一度、中庭でのんびりと過ごされます。身体の調子が良い時に限られてはいますけれど。
「今日はお天気も良いですし、良かったですね。」
土岐さんの身体を支えながら、廊下を進んでいきます。
「本当に。なんかわたしね、外に出ない日があるとこう、モヤッとするのよ。」
「分かります。ずっと閉じこもっていると気分が晴れませんよね。」
ガラス戸を開けて芝生の庭に出ると、穏やかな風が吹きました。気持ちの良い午後です。