春・紅茶・春
その日の放課後。
ブーブー文句を言う里桜をおいて、私はレポートの資料を探すために、図書室へ向かった。

テスト期間が終わったので、壱くんは部活に行ってしまったのだろう。

全く…。
壱くんの部活が無いときは、知らん顔のクセにさ…。
調子いいんだから。

少しため息をつきながら、図書室のドアを開けた。

「…あ。」

そこには、黒木くんしかいなかった。

よく考えたら放課後にわざわざ図書室に寄る生徒なんて、滅多にいないだろう。

…また2人きりだよ。

この先、誰かが図書室に入ってくる事を願いながら、私は資料を探し始めた。

が。何がどこにあるのかサッパリ解らない。

そもそも私が図書室に入ったのは、この前の中間テストの時が初めてだった。

マズい…。
このままじゃ、資料を探すだけで1週間終わってしまう。

「暁さん。」

呼ばれるはずのない自分の名前に、驚きながら振り返った。

今…呼んだのって…黒木くん?

「名前。」

「え!?」

「名前。暁さんであってるよね?」

不思議そうに私の顔をみる。

「うん。あってる…けど…。」

もしかして、私、初めて黒木くんに話しかけられたんじゃない?

ていうか!一体なに!?
もしかして…私、また何か邪魔してた!?
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