春・紅茶・春

と。意気込んでみたものの…。

｢勉強って…毎日コツコツ積み重ねていくもんなんだな…。｣

アパートに帰ってきて、さっそく教科書を広げてみたが…。
サッパリわからない。

私…。ノートはキレイに書いてるのにな…。

その時、玄関のドアが開いた。

｢琴子ちゃぁぁん♪ただいまぁん☆｣

どうやら、母が帰ってきたらしい。

｢また飲んでるの？｣

｢だってぇ、お酒飲む仕事なんだもぉん。｣

千鳥足の母の肩を支えながら、居間へ連れて行く。

｢おかぁさんはぁ～、酔っ払いだけどぉ、琴子ちゃんの為にぃねぇ、お酒飲む仕事してるんだもぉん♪｣

｢今、水持ってくるからね。｣

私の母は、昼は普通の会社員。夜はスナックでバイトをしている。

｢お母さん、水…。｣

水を持って居間に戻ると、そのまま床で眠っていた。

母は、私を人並みに大学まで行かせる為に、毎日毎日、朝は早く出て行って、夜は遅く帰ってくる。<琴子の為に。琴子の為に。>

と、呪文のように繰り返しながら…。

母は父と結婚していなかった。

<未婚の母>という現代社会からの偏見に耐えながら、私を育てた。
女手１つで子供を育てるのは、きっと想像を絶する苦労があったに違いない。