おたく王子
「きゃあああああっ!!!」
ガバッ!
朝日はベッドから飛び起きた。
「はぁ、はぁ・・・」
朝日は冷や汗をビッショリとかいていた。
顔に張りついた髪を払い、見慣れた自室にいることを認識してホッとする。
「良かった・・・夢か・・・」
6月上旬。
今日はよく晴れていて日射しが温かい。
しかし朝日の気分は晴れなかった。
昨日の出来事が頭から離れずにモヤモヤする。
・・・怖い。
朝日の正直な気持ちだった。
親には心配かけたくないからといつも通りに家を出てきたものの、学校へ向かう足取りは重い。
でも。
ここで泣いたり学校休んだりしたら私の負けだ。
絶対に休むもんかっ。
いつもの通学路を歩きながら、朝日は自分の足元に視線を落とした。
焦げ茶色の履き慣らしたローファー。
『斎藤さんのですよね』
昨日の是人の言葉がふと蘇る。
あの時、アイツが来てくれたから私は・・・。
「朝日ちゃん、なにかあった?」
「え?」
眞子が心配そうに目尻を下げながら朝日の顔を覗き込んでくる。
朝日は鞄から教科書を取り出す手を止めて眞子に尋ねた。
「なんで?」
「・・・なんか朝日ちゃん、さっきから上の空だったから」
「え・・・?嘘?本当?」
「ほんと・・・」