おたく王子
「なんですか?さっきから気持ち悪い」
是人は不機嫌そうに言った。
他でもなくその言葉は隣の席に座る斎藤朝日に向けられていた。
「なっ・・・!気持ち悪いってなによ!」
「僕は思ったままを言ったまでです。一体全体どういうつもりですか?人のことチラチラチラチラチラチラ見てきて」
「そっ・・・そんなにチラチラ見てないわよっ!」
「いいえ。見てました」
「・・・」
そう言われても朝日は全否定できなかった。
確かに是人のこと盗み見てたけど、そこまで見てたかなぁ・・・。
チラ。
「ほらまた!」
是人に素早く釘を刺されて朝日はサッと顔を伏せた。
だって・・・。
やっぱり気になるじゃん・・・。
朝日は是人が来る前に眞子が言った言葉を思い返す。
『是人くん、優しいもんね』
・・・優しい、かぁ・・・。
確かに、眞子が教えてくれたエピソードを聞く限り、優しいような気もする。
みんなが嫌な思いしないように、自分が嫌なことを被ってあげてるわけだし。
それに加えて、昨日の出来事。
偶然にもピンチの場面で現れて、助けてくれて。
ただのオタクだって馬鹿にしてたのに・・・。
「あ・・・」
そうだ私、昨日のお礼、是人に言ってない。
助けてもらったのに。
言った方がいいよね・・・?やっぱり。
「あのぉ、是人・・・」
朝日はもじもじしながら是人を呼んだ。