おたく王子
プレゼント
朝日は大慌てで掃除をしていた。
脱ぎっぱなしで放り出してあった洋服を洗濯機に投げ入れ、散乱した授業のプリントを一まとめにする。
窓を開けて換気をしながら掃除機をかけた。
壁に掛けた時計に目をやるともう9時半を回っていた。
ヤバい・・・!
もうすぐ眞子ちゃんが来ちゃう!
10時に家に来る約束していた。
――『朝日ちゃん、今週末、一緒にお菓子作らない?』――
眞子がそう提案したのが事の発端だ。
朝日は眞子が突然お菓子作りに誘ってきた理由がわからず戸惑った。
な、なんで急にお菓子を・・・?
大雑把で不器用な朝日は、お菓子作りなどまともにしたことがない。
経験があるのはマシュマロをコンロの火で炙って焼きマシュマロを作ったぐらいだ。
私が眞子ちゃんと一緒にお菓子作っても足を引っ張るだけに決まってる・・・。
朝日は眞子には悪いが誘いを断ろうとした。
『えっと・・・眞子ちゃん、私、そういういかにも女の子なことはちょっと苦手で・・・』
しかし、眞子は朝日の渋っている様子を見るや、
『大丈夫!朝日ちゃん苦手なら私手伝うから!』
と胸を叩いてみせた。
確かに眞子にはどこか家庭的な雰囲気がある。
お菓子作りも得意そうな気がした。
眞子のフォローがあれば朝日でもなんとかなるかもしれない。
でも。
『なんでいきなりお菓子を?』
朝日は率直に聞いてみた。
その質問に眞子は待ってましたとばかりに目を輝かせて言った。
『お菓子作って、是人くんへのプレゼントにするって、どうかな?』