おたく王子
朝日は是人の言った意味がよく理解できなかった。
初回側転?
レアチーズ?
「・・・なにそれ?」
思わず朝日は是人の持っている本に手を伸ばそうとした。
すると。
「駄目ですっ!」
是人が叫んで本を胸の中に抱え込んだ。
そのために朝日の手は虚しく空を切る。
「これは僕が大好きなゲーム、『ロイヤルファンタジー』の公式キャラクターブックなんです!それも初回限定版でヒロインのジャスミンちゃんのレアカードが付いてるんですから!汚い手で触らないでください!」
その瞬間、朝日の時間が止まった。
是人の言葉が頭の中で反響する。
――『これは僕が大好きなゲーム、"ロイヤルファンタジー"の公式キャラクターブックなんです!
なんです!
なんです!
なんです・・・・』――
・・・。
き・・・。
きもい。
朝日の身体中に是人に向けた嫌悪感が満ちていく。
もはや罵倒の言葉も出てこない。
朝日はクッキーを未だに後ろ手に持ったままでフリーズしていた。
その間にも是人はロイヤルファンタジーの本を読み耽っていた。
「あー、やっぱりロイファンは最高です・・・」
「・・・・」
そんな二人の様子を、眞子は隣で心配そうに見守り続けていた・・・。