おたく王子
眞子は優しい笑顔を浮かべながら朝日を元気づける。
「せっかく朝日ちゃんが気持ちを込めて作ったクッキーだもん、喜んでくれるよ。朝日ちゃん、是人くんにありがとうって伝えるんでしょ?」
「"ありがとう"・・・」
朝日は眞子の言葉でハッとした。
そうだった。
さっきの休み時間での出来事といい、普段の行いといい、やっぱり是人はオタクだしキモい。
正直、さっきのはムカついたし引いた。
それに、 『これ斎藤さんが作ったんですか?熱でもあるんじゃないですか?』と顔をしかめる是人が思い浮かんでくる。
でも・・・。
――『斎藤さんのですよね』――
――『床に寝たら汚いこともわからなくなったんですか?』――
助けてくれた。
知らんぷりして帰ることだってできたはず。
だけど、ちゃんと助けてくれた。
是人にとってはただの気まぐれかもしれないけど。
少なくとも、私は是人のおかげで救われたんだ。
だから、オタクとかキモいとかは関係ない。
ちゃんと、ありがとうって言わなきゃ・・・。
「・・・ありがとう眞子ちゃん。私、ちゃんと渡すよ」
そう呟いた朝日に、眞子は嬉しそうに頷いた・・・。