おたく王子
「え?ちょっと待って、どこ行くの?」
朝日は焦りながら早口で言った。
6限の授業が終了すると同時に、是人がサッと席から立ったのだ。
肩には通学鞄がしっかりかけられている。
「どこ行くのって、帰るに決まってるじゃないですか」
是人は呆れたように朝日に言う。
「いや、だって早すぎでしょ!今授業終わったんだよ?これから帰り支度するでしょ、フツー」
「僕は斎藤さんのようにノロマではないので。帰り支度は早めに済ませておくんです」
「誰がノロマよ!だっていつもは是人こんなに早くないじゃない!」
朝日の反論に是人は口をつぐんだ。
そしてなにかを考えるように少し間を置いてから、ボソリと呟いた。
「・・・ちょっと用事があるんですよ」
「用事?」