おたく王子
放課後の冒険
玄関にはもう是人の姿はなかった。
「は、早・・・!」
朝日は素早く靴を履き替えると外に飛び出した。
そして辺りを見渡してボサボサ頭の細身の男を探す。
ちょうどみんなが下校する時間のため、人が大勢いてなかなか見つからない。
朝日は三々五々になって帰っていく生徒の群れを避けながら、校門までたどり着いた。
もう帰っちゃったのかな・・・?
諦めかけながら校門から出て、左右に伸びる道を交互に見ると。
「あ!」
右の道のずっと向こうに是人の姿を捉えた。
「もうあんなところに・・・!」
朝日はすぐに後を追う。
しかし、必死の朝日を嘲笑うかのように、数百メートル先で、是人は横断歩道を渡り始めた。
「なっ・・・!」
あの馬鹿・・・いやあのオタク!
なんで反対車線に渡るのよ!
あそこの信号変わるの時間かかるのに!
朝日が心の中でぼやいたが、是人に聞こえるはずもない。
是人は歩みを緩めることもなくスタスタと進んでいく。
そのうち小さな路地に入っていくのが見えた。
是人の姿が朝日の視界から消える。
「やばっ・・・!」