おたく王子
朝日はこれ以上ないくらい足を早めたが、案の定、赤信号に捕まってしまった。
「もー!早くして!」
朝日はイライラと足踏みをしながら信号を待つ。
その間にもどんどん時間は過ぎていく。
「早く!早く!」
やっと信号が変わる。
朝日は青信号と同時に飛び出して、さっき是人が入っていった小道まで走った。
が。
「いない・・・」
もうそこに是人はいなかった。
「はぁ・・・どうしよう・・・」
朝日は走ったせいで息を切らしながら途方に暮れた。
膝に手をついてしばらく息を整えてから、ぐるんと回りを見た。
両側にブロック塀が連なって、少し向こうに駐車場になっている広場が見える。その先の道は二股に分かれていた。
知らないところだ・・・。
朝日の普段の通学路では通らない道だった。
確かアイツ、用事があるって言ってた。
どこかに寄り道するのかもしれない。
でも、こんな細い道に寄る場所なんて・・・。
そう思った朝日の視界に、何かが映った。
「やった!レアカード出た!」
「まじかよ!見せて!うわ!ホントだすげぇ!」
「いいなぁ!俺のと交換しようぜ!」
ランドセルを背負った男の子の三人組だった。
わいわい騒ぎながら二股に分かれた右側の道から駆けてくる。
三人共、手にカードのような物を何枚か持っていた。
それを見て、朝日はピンと来た。
そして近づいてきた三人に尋ねる。
「ねえ、それどこで買ったの?」