おたく王子
脅迫
「貴方は・・・!」
是人は緑の顔を見るや、驚愕した声を出した。
信じられないといった様子で息を飲む。
「おっひさ~。是人くん。俺のこと覚えててくれた?」
緑はにこやかに手を顔の横でぶんぶん振っている。
「・・・・」
是人は緑の問いかけには答えず、緑の足元に横たわっている少女に気がついた。
「斉藤さん・・・!」
是人は縛られて泣きそうな顔をしている朝日の姿をとらえた。
「是人ぉ・・・」
朝日は見慣れた是人の姿を見てホッとした。
安心の涙があふれだす。
「なんで・・・なんで来たのよぉ・・・。アンタだって危なくなるのに・・・」
泣きながら言う朝日に、是人はポケットから何かを取り出してみせた。
「これの感想を言わないといけないと思いまして」
それは朝日のクッキーを包んでいたラッピング袋だった。
「な・・・!?何でそれをアンタが・・・!?」
驚く朝日に、是人はさらにポケットから白い二つ折りのカードを取り出した。
表に、手書きで『是人へ』と書いてある。
「そ、それは・・・!」
「これ見たら僕当てだったんで。遠慮なく食べてみました。それで感想なんですが・・・」
言いながら朝日に近づこうとする是人を、緑が制した。
「ストーップ!」
「!」
是人はすぐに足を止めた。
直立したまま緑をじっと見据える。
「是人くんね、今からそこ動いちゃダメね。ダ、メ。おっけー?」
緑が是人の足元を指差しながら言った。
「・・・もしも動いたら?」
是人は冷静に緑に投げ掛ける。