おたく王子
「動いたら~。う~ん、どうしよっかなぁ~・・・。じゃあ朝日ちんを傷つけるってのはどう?あ、それいいね~ん。それに決定~」
緑は子供のように楽しげに話す。
「・・・わかりました。ここから動きません」
是人は丸腰だとアピールするかのように両腕を広げてみせる。
「お~う。いい子ちゃんだねん。是人くん」
緑は満足気に唇を舌でべろんと舐め回した。
「是人!こんなやつの言うこと聞かなくていいよ!」
朝日は叫んだが是人はその場から動かない。
「斉藤さん」
「な、なに?」
「形はともかく、味はまあまあ良かったですよ」
朝日は一瞬是人がなにを言っているのかわからなかった。
しかしすぐにクッキーのことを言っていると理解した。
「まあまあってなによ!わざわざアンタのために焼いたんだから!生意気なこと言わないでよ!」
朝日は言葉では是人に怒りながら、顔は泣き笑いしていた。
是人が来てくれた。
朝日はそれが嬉しかった。
佐奈達に襲われた時は、たまたまその場面に遭遇したから、気まぐれで助けてくれたんだと思ってた。
だから、緑が是人を呼び出したって来ないと思った。
・・・でも。
ちゃんと、来てくれた。