おたく王子
「あはははははは!!!」
緑が盛大に笑い出した。
腹を抱えて床に転がる。
朝日にはその姿がとてつもなく不気味に写った。
コイツ・・・まじヤバいよ・・・。
頭おかしい・・・。
緑は両手を叩いてヒイヒイ笑いながら、首だけ回して朝日を見た。
「ひゃはは!朝日ちーん、見たぁ!?あっはは!是人くんブルブル震えてやんのっ!はは!」
「・・・・」
緑は完全に是人のことを馬鹿にしているようだ。
朝日は心配そうな目を是人に向けた。
是人・・・。
一体どうしたの・・・?
今の是人にいつもの冷静さはどこにもない。
まるで子犬のように何かを怖がって怯えているようだ。
でも、怖がるって、なにを・・・?
朝日は是人が守るように手で覆っている前髪を見つめた。
――『上げてみてよ、前髪』――
さっき緑は是人にそう言った。
それから是人は震え出した。
前髪が・・・何なの・・・?
是人の前髪は長い。
でもそれはただ単に是人がオタクで、お洒落に興味がなくって。
見た目に無頓着だから好き放題に伸ばしてるって。
そう思ってた。
でも・・・。
何か、長い前髪に意味があるの・・・?