雪の降る日に
「七瀬……」
俺はなんとか泣き止ませたくて、七瀬の頬に触れようとした。
「───ッ!」
かぶりを振って、七瀬は数歩後ろに下がった。
「ッ…触らないで…」
強い、拒否。
「な…」
──どうして?
そう言いたくて、呟いた。
「あなたのせいじゃない…!」
ガンッと、全身に衝撃。
ああそうか…
俺は…俺は七瀬を──…
途端、体が石のように重くなった。
闇が、深くなる。
七瀬はうつ向き瞳を閉じた。
涙が余計、頬を伝った。
そして七瀬は俺に背を向け、そのまま歩き出した。
「なっ…七瀬!ッ待てよ!」
動けない、手だけが宙をかく。
深くなった闇は、あっという間に七瀬を飲み込んでいく。
「──ッ!!七瀬!!」