雪の降る日に
ハッと、目が覚めた。
夜が明け始めた頃で、不思議な光が天井を彩っていた。
目に、微か涙が溜っていた。頬も、冷たい。
泣きたいのは、いや、泣くのは七瀬の方なのに。
俺は家に帰り部屋に入ってから、涙が止まらなかった。
天井を見つめ、俺はぼんやりと夢を思い返した。
去って行く七瀬。
動けない俺。
ひらく、俺達の距離。
「バカじゃねぇ…? 俺…」
フッと潮笑が口をついた。
俺が呼び止めたって、七瀬が待ってくれるわけがない。
だって、俺は七瀬を…──
「──ッ」
また涙がこみあげた。
俺はそれを拭うこともしないで、ただただ夢の中の七瀬の姿を何度も反芻していた。