雪の降る日に
 

─七瀬 綾。あいつの名前。


俺と七瀬には、中学が一緒という事以外、なんのつながりもない。
高校に入ってからも、話す事なんて全くなかった。

中学の時とは打って変わって七瀬は長い髪を肩まで切り揃え、眼鏡からコンタクトに替えた。


それだけのことなのに、すごく可愛くなった。


俺が知っているのはそのくらい。見てくれで分かることしか知らない。


あ、でも最近分かったことがあって、七瀬が茶道部の部長を任されたということだ。
この前部長会議があって、そこに七瀬が来てたから。

部長会議は30分ほどだった。

同じ場所にそれだけ長くいたのはその時が初めてだった。
いつもの俺ならそんな
堅苦しいもん、かったるくてやってられないハズなのに、全然苦にならなかった。





気が付くと、ずっと七瀬を見ていた。


部の資料を見ている七瀬。
考え事をしている七瀬。 
友達とひそひそ話をして、笑っている七瀬…── 



何かが、溢れそうになった。


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