雪の降る日に
 


七瀬は居た。

七瀬は壁に向かいプリントを画鋲で止めていた。

ピクン、と画鋲を留めていた手を止め、七瀬は振り向いた。


「ぁ…」

七瀬は小さく悲鳴をあげた。
俺を捉えた瞳は見開かれ、そのまま表情は怯えたものに変わっていく。


怯んだ。
目を逸らさずにはいられなくて目線を落とした。手に力が入り握っていたプリントがクシャっと、音をたてた。



「…七瀬…、っ俺…」


一歩踏み出し、意を決して七瀬を見た。






「─ッ来ないで……!!」



瞬間、七瀬は後退り壁に背を付けた。



「え……」




< 51 / 70 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop