太陽と月
「君、誰?」

やっぱり私の事、知らないんだ。

私の名前、打ち明けるの怖い。
だって、名前を言ったらイジメられそうで怖い。
私の唯一の居場所が無くなりそうで怖い。

そう思い、名前の知らない人を見ると驚くほど透き通った目で私を真っ直ぐ見つめていた。

…大丈夫、この人は。

言うことを決心して勇気を振り絞った。
「…中村紗弥、です」
そう言うと、名前の知らない人は私の頭を容赦なく撫でて優しい笑顔で、
「紗弥」
と呟いた。

いきなり名前で呼ばれて思わず顔が赤くなる。

そんな私をお構いなしに話を続ける。

「俺は長谷川竜。
知らない?」
と聞かれる。

…長谷川、竜?
聞いたことない。

そう思い首を傾げると、苦笑いをし、

「知らないか。ある意味有名なんだけどな。不登校の長谷川竜って」
と、くしゃくしゃに私の頭を撫でる。

……不登校?
って言ったよね?

「ああ、うん。不登校。まあ、学校来てるから不登校じゃないんだけどな」

思ったことが思わず口に出てしまったのか長谷川竜は、そう言う。

キーンコーンカーンコーン
て授業開始の合図が鳴る。

行かなきゃだけど、もう少し長谷川竜と話していたい…。

「竜って呼んで」

そう言い、竜は、その場に残った。

私は屋上を後にし教室へと走った。
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