彼に恋した夏(方言企画大阪弁編)
だけど

『………』


小春ちゃんは
うつむいて黙り込んでしまった。


気まずい空気が流れる。



ここで―…

俺まで沈黙するのは
駄目だ。


話題…話題…

なにか言わなきゃ…



『…美術部は楽しい?』


言ってから
少し後悔する。


馬鹿らしすぎる
質問だと思ったから。


でも何か言わなきゃ
もたなかった。



小春ちゃんは
顔をあげて俺を見た。


『…うちのこと嫌いなった…?』


消えそうな声で
呟いく小春ちゃん。


丸い瞳は揺れて
今にも泣き出しそうだ…



『嫌いになんて…』


なってないよ。



むしろ―…

小春ちゃんを知るたびに
惹かれてる俺がいる。


認めたくない…


お互いに
傷付くだけだろ。



でも事実だ…。


だからこうして
距離をとってる。



君を好きにならないように。





これ以上

君を好きにならないように…




マキ君の台詞が
頭をよぎる。



俺は一度
小さく息をはいた。


そして静かに言う。



『仲良くなったから
いろいろ勘違いしたかな…?』


小春ちゃんを
見つめる。


『…俺に期待しないで。』


小春ちゃんの目が
大きくなった。



ごめん…

たまらず俺は
目を反らした。



タイミング良く
オバサンの声が聞こえた。


『晩ごはんみたいだね』

俺は小さく微笑んで
腰を上げた。


『……』


小春ちゃんは
うつむいたまま動かない。


胸が痛い…


『先に行くね』


俺は逃げるように
部屋から出た。


< 40 / 90 >

この作品をシェア

pagetop