彼に恋した夏(方言企画大阪弁編)
『こ…小春ちゃん…』


ドアのところで
仁王立ちする小春ちゃんは


お風呂上がりらしく


髪からはポタポタと
水滴が落ちていた。


Tシャツの肩が
濡れている。


バスタオルは
手に握りしめたまま
引きずっていて…


お風呂上がりなのに
お世辞ですら


色っぽいとは
言えない風だった。


小春ちゃんは
俺を見つめた。


『やっぱり変やよ…』


切なく言う小春ちゃん。


小春ちゃんの
切ない声と表情に


俺の心はまた
揺れだす。



だめだ…

冷静になれ―…


心の中で
一呼吸おいた。


『なにが?』


平静を装おって
俺は首をかしげる。


『ってか髪びしょびしょだよ』


少し微笑む。


微笑みながら
心の中では怖かった。


頼むから
もう攻めないでくれ。



俺はこれ以上
嘘をつける自信がない…


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