彼に恋した夏(方言企画大阪弁編)
池○駅につくと浴衣姿の人が
ちらほらいた。


馴れない下駄でゆっくり歩く
小春ちゃん。


『足の親指、痛い―』


俺は駅内のコンビニで
絆創膏を買った。


『ほら、足だして』

しゃがんで膝の上に小春ちゃんの足を乗っけた。

足の指に絆創膏を巻いてやる。


『これでちょっとマシだろ?』

『うん…』


小春ちゃんは
ちょっと感動した顔で俺を見つめてる。


『直樹くんて…大人やなぁ』


『そんなこと…』


俺は苦笑いする。

じつは昔、元カノが
ヒールでくつづれ作ったときに絆創膏やってたの覚えてただけなんだ…

なんて事はもちろん言わない。


ゆっくり歩くと、
猪名川までは駅からすぐだった。


河川敷には屋台が並ぶ。


『うひゃあ―直樹くん食べよう』


無邪気にはしゃぐ
小春ちゃん。


買ったものいちいち全部
デジカメで撮ってるし。


『食いもんより、
小春ちゃんを残さないと』


俺はデジカメを奪って
小春ちゃんを撮った。


恥ずかしいのか赤い顔の
小春ちゃん。


シャッターを切りながら
そんな小春ちゃんを
俺は目にも焼き付けていく。


時々みせる
小春ちゃんの切ない目。


時間ばかりが過ぎていく。


徐々に日が暮れて
河川敷には浴衣姿の人が
多くなってきた。


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