彼に恋した夏(方言企画大阪弁編)
電車がホームに入ってきた。

ぞろぞろと
乗り込む花火客。


プシュー…


扉が閉まり
満員の電車は走って行った。


俺と小春ちゃんは
まだホームにいた。


『…はは、これ何本めだろ』


もう1時間以上ここにいる。


花火客も途絶えた。


『次こそは乗らなきゃなぁ』


つないだ手に力を込めた。


いつもと逆で
さっきから俺ばっか喋ってる。


『小春ちゃん…?』


小春ちゃんを見ると、
俯いて表情が分からない。


『大丈夫…?』


俺が小春ちゃんを
覗きこむと



ぎゅ…


今度は小春ちゃんが
手に力を込めた。


『直樹くんが…』


小さな小さな
小春ちゃんの声。


『…うん?』


聞き取るのが
やっとだった。



『直樹くんが…キスしてくれるまで帰らへんもん…』



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