彼に恋した夏(方言企画大阪弁編)
新幹線の中


俺は席について
小春ちゃんのくれた紙袋を見る。


窓の外の
小春ちゃんの最後の顔が
目に焼きついている。


今や窓の外は京都。


『………』

俺はようやく
紙袋に手を伸ばした。


最後の土産がBL本って…


俺の口元がゆるむ。


『ほんと小春ちゃんらしいな…』


取り出した紙の束は
割りと分厚い。

右上をクリップで止めてある。


こんなにいつの間に…


そういえば
最近深夜まで小春ちゃんの部屋の灯りが漏れていたのを思い出す。


俺の帰還に合わせて
がんばってくれたのかな…


パラ…

表紙をめくって漫画を読みだす。


デッサン力があるせいか
なかなか上手い絵じゃん。


あ…このシーン

小春ちゃんにポーズ頼まれてたやつかな。


『くく…』


思わず笑みが溢れた。


主人公は直

ヒロインは春子




全然BLじゃない。


俺と小春ちゃんの物語だった。




< 78 / 90 >

この作品をシェア

pagetop