彼に恋した夏(方言企画大阪弁編)
俺の伸ばした手の先に
何かが触れた。


『ん?』


あ…

見ると数冊の本だった。


そういや同じ講義の女子が
お薦めって貸してくれたっけ。


女の子の漫画だし
気が乗らなくてまだ読んでなかったけど…


そろそろ返さなきゃだし
読んでみるか。



パラ…


何気なく
俺はベッドに転がり読み出した。



内容は
結構面白い漫画だった。

うん、
お薦めなだけはある。



途中、こんな台詞が出てきた。


“会えなかった分…今その分のキスをして…”


潤んだ瞳の主人公。


“ああ…”


主人公を愛しい目で見つめながらキスをするヒーロー。


2人はその後
感動的にベッドシーンへと
流れ込む。





…なんだよこれ


『くく…』


泣きどころなのに
俺は笑いが込み上げてくる。


だって、絶対これって…



あの日の小春ちゃんを
思い出す。


俺は漫画をおいて
窓の外を見た。


澄んだ青空。

浮かれた太一くんの顔が浮かぶ。



今ごろ…

今ごろ小春ちゃんは
何をしてるんだろう…



この春も会いに行けるかな…


窓の外からは
優しい風が吹き込んで
カーテンを揺らしていた 。








*fin*


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