どーるぷりんせす



「そ‥うなんですか‥」


お母さんは前に、「もうモデルはやらない」と断言していた。

家族を大事にしたいかららしいけど‥。


けどこれを聞いたのはあたしがまだ幼かったころ。


お父さんは今と変わらずほとんど家に居なかったし、お母さんまで家に居なかったらあたしが1人になってしまう。


人一倍淋しがりだったあたしを気遣って言ってくれたのだろう。


でもあたしは子供ながらに気付いていた。

「あ、お母さんはモデルがやりたいんだ」

って。


お母さんが自分が出ていた雑誌を見ているときの目は、言葉で表せないほど輝いていた。


モデルという仕事に誇りを持っていたんだと思う。


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