くもりのちはれ
「しお...早乙女。」
彼が戸惑っている
のが手に取るように分かる。
でも私は私でパニック状態で。
掴まれた腕にどんどん
力がこもっていくのがわかった。
「痛いよ。庄司君。」
なるべく、
なにもなかったかのように。
「離して、庄司君。」
平然を装って彼の名字を呼ぶ。
私はもう、
晴登の彼女じゃないんだもんね。
そして私は、
当たり前のようにこう言った。
「庄司君。これからは、
クラスメイトとしてよろしくね。」
そして、一生懸命笑顔を作った。
「詩音....なんで。」
「詩音じゃないよ。早乙女だよ。」
私だって晴登って呼びたい。
だけど....だから。
そのためには、時間が必要なんだ。
事が収まるのを待つしかないんだ。
あの時の空は、
雲が一つ孤独に浮いていた_____