発明王ショート
「なるほど、また眞森くんの発明というわけね」


『はい』


「あ、いや、その……」


 星野の問いかけに、またしても箱が返事をしてしまい慌てるショート。

星野は返事を聞くまでもないとばかり、体の向きを教卓側に変えて、歩き出す。


「この箱は没収します」


「えー!? 星野先生、ちょっと待ってください! それ作るのお金かかったんですよ!」


「知りません」


「ひどい!」


 ショートに背中を向けて、歩きながら話していた星野が、その動きを止めた。

そしてまた振り返り、ショートの顔を見て、にっこりと笑みを浮かべた。


「それと、わかっているとは思いますけど、もちろん今日も遅刻になりますから」


「そ、そんな!」


「これで今月に入って3日連続遅刻ね。放課後、体育館裏にくるように」


万事休す。ショートはがっくりと肩を落とした。


「なんでそんな告白みたいな場所に……」



◆◆◆



「ではこれで朝礼を終わりにします。号令」


「きりーつ、きをつけー、れーい」


「ありがとうございましたー」


 ホームルームが終わると、ショートの友人である田井郁男(タイ イクオ)が、さっそくショートの元にやってきた。

田井はがっちりとした体格に色黒の体で、見るからにスポーツマン。

貧弱色白のショートとは、正反対だ。


「オイ、ショート。なんだよ、さっきの機械!」


「はぁ、あれ高かったのになぁ」


 ショートは恋する乙女のごとくため息をつくと、遠い目で真夏の太陽が降り注ぐ、窓の外へ目をやった。


「もったいぶってないで教えろよ!」


 田井がジャイアンのごとく握りこぶしを見せてきたので、ショートは慌てて恋する乙女ごっこをやめた。


「あれはね、名付けて『代返くん』だ」


「『代返くん』?」
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