あたしの前だけ俺様王子☆
あたしは恥ずかしくなってパッと俯いた。
絶対…今、顔赤い…っ
「いくら俺がかっこいいからって、そんなに見とれんなよ」
「な…っ、見とれてなんか!」
――ない――
そう言おうとしたけど。
パッと顔を上げたとき、彼は目を細めて笑った。
さっきまでのあざ笑うような笑顔じゃなくて、とても自然的な笑顔な気がした。
でも、それも一瞬で。
「俺に惚れたとか言うなよ?
俺は美人じゃねーと却下だからな」
そう言ってあたしにデコピンをし、ゆっくり立ち上がる。
「い、いったぁ…っ」
彼の細長いきれいな指から放たれたデコピンは、意外にも勢いがあった。
あたしはデコピンをされたおでこを手でさする。
「お前みたいなお子ちゃま、絶対に対象外だな」
クスッと笑って言った彼。
そのまま屋上の出口へ歩いて行く。
「び、美人じゃなくて悪かったわねーっ!」
あたしは彼の後ろ姿に向かって精一杯叫ぶ。
「あ、あたしだってあんたみたいな性悪男…、絶対にお断りします!」
そう言うと彼はあたしのほうを振り向かずに、片手をひらひらとさせて
「勝手に言っとけ」
それだけ言って、屋上から出て行った。