キミといたくて ~AYA~
「亜矢ちゃん、後でサイン帳渡すから、書いてね」
「あ……うん」
誰かと思えば、奈美ちゃん。結衣ちゃんがいたグループの女の子。
妙だな、と思った。同じクラスだけど、あたしたちはタイプが違うから、用がないときはめったに話さないのに。
何かあるんだろうな、と思っていた。すると、奈美ちゃんは案の定、小さな声で訊いてくる。
「結衣、あたしたちのこと……何か言ってた?」
やっぱり。どうせあの子のことだろう、と考えていたあたし。
「何かって?」
「んー……悪口とか」
奈美ちゃんたちはまだ、結衣ちゃんのことを気にしてるんだな。
「……言ってなかったよ」
結衣ちゃんをかばう気持ちなんて、これっぽっちもない。できることなら、この子たちと一緒に悪口を言いたいくらいだ。
でも、結衣ちゃんの口から、この子たちの悪口は聞いたことがない。
というか、あの子はこの子たちの話を一切していなかった。