キミといたくて ~AYA~
第8話
睨み合うわけでもなく、ただお互いの顔を見つめるだけ。そんなあたしたちの間を、数人の男子がはしゃぎながら通り過ぎていく。
「何?」
いつまでもこうしていたって、と声をかけるあたし。
無表情で訊ねると、結衣ちゃんは少しだけ視点を下げた。
「ごめんね、亜矢ちゃん」
何を言い出すのかと思えば、いきなり謝られた。何に対しての言葉かは、訊かなくても大体わかる。
返事をせずに黙っていると、彼女はひとつにくくった髪の、肩に乗った部分を指でといた。
「あたし、イヤな思いさせたよね。……でも、真由美を奪うつもりなんてなかったの。……あたし、亜矢ちゃんには受け入れられてない気がしてて、喋りやすい真由美のほうにばっか話しかけてた」
「……」
語られる気持ちは、さっきトイレの中で感じていたもの。
なんて返そうか考える。けれど、今の気持ちを言葉で表すのは難しくて。
そうしている間に、大きな音で校内放送が流れた。