[企]*white valentine*


冬だから寒さの覚悟はできている。

当たり前だよ、と笑ってみせると「そんな顔していいの?」とチサが私の手に、赤くなったチサの手を重ねてきた。

その瞬間に、思わず手を跳ねのけてしまう。

本当に今日はいつも以上に寒いみたい。


「ここにいたらすごく暖かそうに見えるのにね」

「太陽は出てるんだけど気温が低いから」


チサの言う通り、太陽が出ている。

曇りでもないし、雨でもない。


ましてや雪なんて……降っているはずがない。



なのに――――。



カランカラン、と来店客を告げる鐘が鳴る。


「いらっしゃ……」


お客さんへ向けた笑顔が凍ってしまった。

< 2 / 56 >

この作品をシェア

pagetop