[企]*white valentine*
冬だから寒さの覚悟はできている。
当たり前だよ、と笑ってみせると「そんな顔していいの?」とチサが私の手に、赤くなったチサの手を重ねてきた。
その瞬間に、思わず手を跳ねのけてしまう。
本当に今日はいつも以上に寒いみたい。
「ここにいたらすごく暖かそうに見えるのにね」
「太陽は出てるんだけど気温が低いから」
チサの言う通り、太陽が出ている。
曇りでもないし、雨でもない。
ましてや雪なんて……降っているはずがない。
なのに――――。
カランカラン、と来店客を告げる鐘が鳴る。
「いらっしゃ……」
お客さんへ向けた笑顔が凍ってしまった。