[企]*white valentine*


私がいなくなったことに気付いているのかいないのか、スノーマンは隣の席にいる年配のお客さんとずっと話している。


人懐っこいにもほどがある。


彼によって少し騒がしくなった店内だけど、嫌な顔をするお客さんは一人もいなくて、こういう風景もあるんだとはじめて知った。



淹れたてのコーヒーを待っていくと、お客さんとしていた話の続きを私に向けて喋り出した。


「ホントは昨日の夜、一晩で完成の予定だったんだけど人手足りなくて。

結局今もやってるから足りなさ過ぎだよね!デパートの担当者に怒られちゃったよ」


……笑ってるけど……怒られたならそれは笑って許されることじゃないと思う。

私が呆気にとられながら聞いていると、話を聞いていたお客さんがフォローを入れてきた。


「毎回あそこのショーウィンドウのディスプレー、この子が考えてるらしいの。

私いつもチェックしてるけど、センスいいわよねぇ」


私も何気なしにチェックしているショーウィンドウ。

いつも面白かったり、綺麗だったり、何かしら心が動くディスプレー。


それをこの目の前の人が考えてるの?


しかも大通りに面したショーウィンドウはデパートの顔ともいえる部分なのに、毎回任されているなんてすごい。


軽そうな見た目だし喋りも砕けてるから、チャラい作業員かと思ったけど……違うんだ。

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