私と彼女とあの夜に
加奈を放置したまま二人は車に乗った。
加奈も急いで車に乗ろうと小さな足を走らせる。
だが、車のドアが開かない。
中からロックがかかっていた。
お母さん…?加奈まだ乗ってないよ!
状況を理解できずにいた幼い加奈は呟くような小さな声でそう言った。
加奈は乗らなくていいのよ、そう冷たく言い放つ母親の姿がそこにはあった。
ここに暮らすのは加奈だけだからお父さんたちはもう行くからな。元気でな?
そう言って車の窓をしめようとする父親。
待って!加奈、一人で残るの嫌だよ!お父さんたちと一緒に帰るっ!
震える声で叫んだが、その声も車のエンジン音に虚しく掻き消された。