オフィスの甘い罠
昨日は冷たく閉ざされてた
大きな木の扉を、ゆっくり
2回、ノックすると――。



「……どうぞ」



落ち着いた声。



あたしは小さく息を吸って
から、ドアを開けた。



中に入ると、グレーの
スーツに身を包んだ柊弥が
部屋の真ん中辺りに立ってる。



そのホントにいかにも
あたしを待ってたって
様子に、あたしは確信を
さらに大きくして、



「何したの、アンタ」



きつい目で柊弥を睨み
ながら、そう単刀直入に
問いを投げつけた。



すると柊弥は何が楽しい
のか、薄い笑みを浮かべて
何度か瞬きをして、



「オイオイ、せめて
おはようの挨拶くらいはしろよ。

一応お前の上司だぜ、オレは」
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