オフィスの甘い罠
(いいわ。

これでホントに、あたしの
世界が“面白く”なるのか。

とくとお手並み拝見しましょ)



そんなことを考えながら、
あたしはいつもの道を
歩いて会社に向かった。



副社長室に着くまでに、
エレベーターホールや
通路で何人も昨日まで同じ
部屋で仕事してた人間と
すれ違う。



だけどほとんどの相手は
あたしが梓だって気づきも
しない。



何人かはギョッとした
顔で目を見開いてたから、
中には気づいたヤツも
いたみたいだけど。



でもあたしはそんな反応も
見向きもしないで、
まっすぐ副社長室を目指した。



ドアはノックするけど、
返事も待たずに中に入る。



柊弥はもうデスクに
座ってて、書類らしき紙を
見ながら携帯で誰かと話してた。



(電話中か……)
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