オフィスの甘い罠
内心で呟くのと同時に、
部屋の片隅に昨日は
なかったパーテーションと
デスクが置かれてるのに気づく。



(これがあたしの席ってわけね)



勝手に判断してあたしは
その上にバッグを置いた。



辞令書には“秘書室”へ
異動、なんて書いてあった
けど、実際この会社には
そんな部署も部屋もない。



この会社で秘書って
言ったら、社長付きの
男の秘書が一人いただけだ。



その人も多分、こんな
感じで社長室で社長と
一緒に仕事してるんだろう。



そんなことを考えながら
ボンヤリしてたら、電話の
終わったらしい柊弥の声が
飛んできた。



「おはよう。

へぇ、やっぱ見違えたな。

オレの見立てたスーツも
バッチリじゃないか」



自慢げな笑顔をあたしは
サラリとスルーして、



「で、あたしは今日から
アンタの何を手伝えばいいの?」
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