オフィスの甘い罠
思い切りいぶかるあたしに
柊弥はニヤリと偉そうな
笑みを浮かべて、



「お前――…

やっぱりいい女だな、梓」



そう言って、長い指先で
クイッとあたしのアゴを掴んだ。



あたしは首を動かして
乱暴にそれを振り払って、



「冗談やめて。

それにアンタこそ、自分の
秘書をそんな馴れ馴れしく
呼ばない方がいーんじゃない」



キッと睨みつけると、
柊弥は大きく肩をすくめて言う。



「他に誰もいないから
いいって言ったのはお前だろ。


――安心しろ。

そう毎日、こんな所で
キスはしないさ。

その代わり、たまには夜も
つきあえよ」



「なっ………誰が!!」



ムリヤリ秘書にさせといて
夜の相手までしろって??



「ふざけんのもたいがいにして!

あたしはアンタの奴隷でも
愛人でもないわ!」
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