オフィスの甘い罠
と――社長と柊弥の顔を
交互に見ながらボーッと
してたら、いきなり社長が
あたしの方を向いた。



ギョッとするあたしに
社長は小首をかしげて、



「もしかして、あなたが
香川さん?」



「え、あ、ハイ」



いきなり名指しで呼ばれて
あたしの返事は素っ頓狂な
声になってしまう。



だけど社長は気を悪くした
様子もなく、逆に楽し
そうにクスッと笑うと、



「柊弥から聞いてます。

この度は急な人事異動で
大変でしょうけど、ぜひ
頑張ってちょうだいね。

なんせ柊弥が、ものすごく
あなたのことを気に
入ってるから」



「え? は、はぁ……」



「オイ、その言い方は
やめろよオフクロ。

せめて才能をかってるとか
言えっての」
< 134 / 288 >

この作品をシェア

pagetop