オフィスの甘い罠
(やっぱ調子狂う……
コイツといると)



ブランド物のスーツとか
渡してきたかと思えば、
誕生日には万年筆。



人を振り回してこき使う
くせに、こんな日にだけ
いいヤツぶって。



やっぱりキケンだ、コイツは。



打ち解けないで秘書の仕事
だけやってればいいって
思ってたけど……それも
ダメかもしれない。




柊弥といると、あたしの
何かが音をたてる。



チリンチリンと、かすかな
鈴の音のように。



その音があたしの心を
震わせて――言いようの
ない不安を連れてくる――…。




「――よくわかんねーな、
お前の言ってることは」



そりゃそーでしょうとも。

アンタにはわからないわよ。



「わかんねーけど――。

お前が誕生日を特別じゃ
ないって言うなら、オレが
“今夜”を特別にしてやるよ」
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