オフィスの甘い罠
「え―――…!?」



小さく叫んだ時には――
あたしはもう、柊弥の腕の
中にいた。



最初はただ抱きしめられた
だけかと思う。



だけどすぐにまたあたしの
体は強い力で引かれて、
重力に逆らってフワッと
体が浮き上がる感覚――…。



「ちょっ……
な、何してんのよ!?」



お姫様だっこされたん
だって把握したとたん、
あたしは周囲の目も忘れて
叫んでた。



周りのテーブルの女のコや
客の視線がこっちに集中してる。



「降ろしてよっ。
どーゆーつもり!?」



金切り声をあげるあたし
とは対照的に、柊弥は
落ち着き払ったゆっくりと
した口調で、



「場所変えようぜ。

ここじゃちょっとばかし
力不足だ」



「は!? 何がよ!?」



「だから言ったろ。

今夜を、お前にとって
“特別”な夜にしてやるって」
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