オフィスの甘い罠
「な―――!?

誰もそんなこと頼んで――…!」



セリフは最後まで言えない。



柊弥は何かトラブルかと
駆け寄ってきたボーイに、
ポイッと何かを投げて渡すと、



「紫苑借りる代わりにそれ
渡しとく。

サインは今度するから」



そう言って、あたしを抱き
かかえたままズンズンと
店の出口に向かって歩き出す。



「あっ、高城様!?

紫苑………!?」



接客中のママもギョッと
してあたし達を見たけど、
柊弥はそれにも見向きも
しないで、あっという間に
店を出た。



薄手のドレスのまま夜風に
さらされるあたしをかばう
ように抱いて、柊弥は
すぐにタクシーをつかまえると、



「さてと。

行くか――トクベツな
ことをしに」
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