オフィスの甘い罠
中央の通路をまっすぐ
歩いてく柊弥を追いかけて
あたしは背中から声をかける。



振り向いた彼の肩越しに、
慈愛の笑みを浮かべる
マリア像が見えた。



さらにその後ろは大きな
ステンドグラスになって
て、差し込む月明かりで
堂内は神秘的な光に包まれてる。




その光を浴びながら、
柊弥が囁くように静かに答えた。



「オレの中で……一番
神様に近い、神聖な場所だ」



「え―――…?」



意味がわからなくて首を
かしげるあたしに、柊弥は
軽くほほ笑んで、



「ここは、オレが子供の頃
一時期入ってた施設の
礼拝堂なんだ。

今は施設の方はもう閉鎖
されたんだけど、礼拝堂
だけは地域住民の管理で
こうして残されてるのさ」



「施設………!?」
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