オフィスの甘い罠
あたしはドキリとして
強張った声になったけど、
当の柊弥はこともなげに笑って、



「俗に言う孤児院ってやつだよ。

まぁオレはオフクロが相当
ビンボーになっちまった
時に救済措置として預け
られただけだから、3年
くらいだけどな」



(柊弥が……孤児院に
入ってた……?)



それはすぐには信じられ
ない話だった。



だって、いつだって自信に
あふれて堂々としてる
柊弥と“孤児院”だなんて
言葉は、とてもじゃない
けどすんなり結びつかない。

それが、たとえ一時的に
預けられてただけだとしても。



(それに、貧乏って……
あの社長と柊弥に、そんな
大変な時期があったんだ――…)



無言のまま頭の中で色んな
考えを巡らせてたら、
柊弥が困ったように
笑いかけてくる。
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