オフィスの甘い罠
「オイオイ、そんな顔すんなよ。

別にオレの苦労話したくて
言ってんじゃないんだから」



「で、でも―――」



「“でも”じゃなくて。

単にオレが毎日祈ってた
場所だってことを言いた
かったんだよ。

おごそかな気分に浸るには
おあつらえむきの場所だろ?」



「おごそかな気分?」



おうむ返しに聞いた
あたしに、柊弥がスッと
腕を伸ばしてきた。



瞳は、その手を握り返す
ことをあたしに求めてる。



「そうだよ。

ホントはこんな深夜じゃ
なかったら、会社の連中
とかオレの家族とか……

賑やかにお前の誕生日を
祝える所に行ってもいいん
だけどな。

さすがにそれはムリだし」



「………だから、ここ?」



「あぁ。

“特別”にするって約束
だからな。

オレがもう一度、ここで
お前を祝ってやる」
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