オフィスの甘い罠
ドアを開けて入ってきた
柊弥は、あたしがいるのを
見て素っ頓狂な声をあげる。



「そういうわけには
いきませんから。

この後は外出ですし」



すでに癖になりつつある
仕事モードの敬語で答え
ながら、内心何だか変な
気分だった。




……あたし達の関係って
何なんだろ?



ホステスと客として
出会って、オフィスで再会して。



あたしを秘書にしたのは、
《紫苑》のあたしを気に
入って面白がってる柊弥の
悪戯みたいなものだと思ってた。



あたしはそのイジワルな
罠にはまっただけ。



命令された仕事はやり
つつも、こんなヤツ大嫌い
だって思ってたはずなのに……。



「……ったく。
変なとこで律儀だな。

大丈夫か? 
ムリしてないだろーな?」
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