オフィスの甘い罠
母親として息子が気がかり
ってことなんだろうか。



でもなんか、社長の表情は
それだけじゃない気がする。



……こっちも答えてあげ
たんだし、少しくらいは
聞いてもいいかな。



あたしは当たり障りのない
言葉を選んで、試しに
尋ねてみた。



「でも、副社長は最初から
経営に加わるつもりで
ビジネス留学されてたん
ですよね?」



すると社長は少しだけ目を
丸くしたけど、特に不快な
様子もなく答えてくれた。



「えぇ、そうよ。

あの子自身がそう言って
くれたから、私が留学先を
手配したの。

まぁいきなり副社長に就任
したのは、前任の退陣が
あったからだけどね」



「そうですか。

それじゃあ副社長にすれば
目標が叶ったわけですし、
楽しくて当然じゃないですか」
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